スリングの横抱きが推奨されない理由と、安全に使うために知っておきたいこと
最近、リングスリングを持つママが増えている
昨日、Instagramに投稿したリングスリングのピーナッツ抱きのリール投稿が、1日経たないうちに保存数70件を超えました。こんなに多くの方に見ていただけて、とても嬉しく思っています。
私が活動を始めた7年ほど前と比べると、リングスリングを持っているお母さんは確実に増えてきているなと感じます。
おしゃれなデザインや、アルミ製のリングを使ったスタイリッシュなデザインも登場していて、セカンド抱っこ紐として選ぶ方が増えている印象です。
リングスリングというと、少し古風なイメージや昔ながらの育児グッズというイメージを持つ方もいるかもしれませんが、最近はそのイメージも変わってきているように思います。
スリングの話題でよく出てくる「横抱き」のこと
スリングの話をすると、やはり横抱きの話題は切っても切り離せません。
実は、日本小児整形外科学会はスリングでの横抱きを推奨していません。
その理由は、発育性股関節形成不全(以前は先天性股関節脱臼と呼ばれていた疾患)のリスクを上げる可能性があるからです。
赤ちゃんの股関節脱臼 ―正しい知識と早期発見のために― | 日本小児整形外科学会 – 日本小児整形外科学会
発育性股関節形成不全は、股関節が少しずつ抜けてきてしまう状態のことで、なぜ起きるのかは実際まだはっきりとは分かっていません。
ですが、なりやすいリスク要因は分かってきていて、
●家族歴
血縁者に先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全がいる。
股関節の人工関節の手術を受けている人がいる。
●女児
●冬生まれ
●逆子(骨盤位)
といった傾向があると言われています。
また、厚着をさせすぎたり、おむつをきつくしすぎたりしないように、という注意もよく聞かれます。
なぜ厚着やおむつのきつさが股関節に影響するのか
厚着をさせることやおむつをきつくすることのデメリットは、赤ちゃんの股関節が内側に入って、膝が伸びた状態になりやすくなることにあります。
赤ちゃんの股関節のゼロポジション、つまり筋肉全体がリラックスしている自然な角度は、大人とは違って、股関節と膝や少し曲がっていて、少し外に開いた状態です。
それよりも膝を伸ばして股関節も伸ばして足をピーンとした状態は、赤ちゃんにとっては股関節の前側(鼠径部あたりの筋肉)が引き伸ばされることになります。
赤ちゃんには原始反射やジェネラルムーブメントといった、無秩序に見えるバタバタした動きがあります。
こうした動きの中で、赤ちゃんは筋肉の収縮などを学習しているのですが、股関節が引き伸ばされている状態でこうした動きが起きると、股関節を抜いてしまうリスクにつながる可能性があると言われています。
つまり、股関節がどこかの筋肉や筋膜が引っ張られるような状況を作らない方がいいということです。
このことが、スリングの横抱きが推奨されない背景にあります。
スリングの横抱きのリスク
スリングの横抱きは、膝を伸ばして抱いてしまう人がいるから推奨されていないのだと、私は解釈しています。
もちろん、お母さんの胸側に当たる足が内側に入りやすいというリスクもあります。
ですがそれよりも、マウスの研究で分かっているエビデンスベースで言うと、膝が伸びていることが発育性股関節形成不全のリスクを上げることが分かっています。
スリングの横抱きで、あぐらをかいたような姿勢ではなく、足をピンと伸ばしたような姿勢で入れてしまう可能性があるから、それは股関節の成長を妨げてしまうし、股関節脱臼のリスクを上げてしまうのでやめましょう、ということなんですね。
北欧の寒い地域では、スウォドリングといって布を赤ちゃんにぐるぐると巻きつけて股関節も伸ばした状態で巻きつけるやり方があります。
ただ、欧米人と日本人では骨盤や股関節のつくりも違います。
日本人がそれをやってしまうと股関節脱臼のリスクが上がってしまうことが分かっているので、日本ではスウォドリングはしません。
おむつがきついとか厚着をさせるということのリスクと、これは同じ意味合いでやらないということになります。
それでも、スリングは使い方次第
スリングの横抱きは、素手で行う横抱きを再現するように布をまとっていけば、大きなリスクはないと私は考えています。

ですが、道具だけが一人歩きをして、大事なそのリスクが認知されないまま、使い方の自由度の高い使い方ができるリングスリングだけが出回ることに、整形外科の先生たちはやはりリスクがあるのではないかと懸念されているのだと思います。
結局それで、お子さんの股関節が脱臼してしまったとなったら、お母さんは自分のことを責めてしまうはずです。
脱臼させたくてそんなことをしているわけではないですから。
だから、小児整形外科学会が推奨しないというのは、
お母さん自身が自分のことを責めないために、そのリスクを減らすために言ってくれているんだな
という理解で私はいます。
リングスリングの魅力
スリングは手軽で、荷物としてはとても軽量です。
肩にかけておけば、少し上着のような、少しスカーフのような感覚で持ち歩くことができます。
スリングを持ち運ぶためにもう一つの袋を用意する必要もなく、いつも持っているカバンの中にすっと入れておくことも、自分の肩にかけておくこともできるので、とても持ち運びに便利です。
使用期間も長く、横抱きができたり、首が座る前から使うこともできます。
使用方法としてはもちろん注意点はいっぱいありますが、新生児期から使うこともできますし、およそだいたい3歳15kgくらいまでを耐荷重の制限にしているスリングが多いので、年少さんに入るくらいの未満児の子まで使うことができます。
リングスリングを持っているママは、使用期間がとても長いなと思います。
抱っこ紐を常に持ち歩いているという感じです。
まとめ
スリングの横抱きが推奨されない理由は、赤ちゃんの股関節を守るためです。
膝が伸びた状態での抱っこは、発育性股関節形成不全のリスクを上げる可能性があると言われています。
ただ、正しい使い方を知っていれば、リングスリングはとても便利で長く使える抱っこ紐でもあります。
リスクを知った上で、赤ちゃんの自然な姿勢を守りながら使っていけるといいですね。

